“一点上質主義”のニュースタンダード。 光木拓也のライフスタイルを支える愛用品と、<br>そのまなざしの向こう。
“一点上質主義”のニュースタンダード。 光木拓也のライフスタイルを支える愛用品と、<br>そのまなざしの向こう。
A NEW LIFESTYLE

“一点上質主義”のニュースタンダード。 光木拓也のライフスタイルを支える愛用品と、
そのまなざしの向こう。

時代の大きなうねりにさらされ、雑誌『Begin』の編集長・光木拓也さんのライフスタイルもまた、変化しつつあるようです。なにせ「編集者たる者……」といった紋切り型の職業観は、もはや通用しない。それにつれ、公私問わず永遠のテーマである“物欲”にも、しかるべく変化が。常日頃からモノと向き合い続ける光木さんは、いま何を選び取るのか。その審美眼のさきを覗き見ます。
  • 光木拓也
    『Begin』編集長光木拓也Takuya Mitsuki

    1977年生まれ。2000年に㈱ワールドフォトプレス入社。『モノ・マガジン』編集部を経て2006年㈱世界文化社に移籍。2017年『Begin10代目編集長に就任。横浜DeNAベイスターズ+Bの商品プロデュース事業を立ち上げるなど『Begin』ブランドの新事業を多数牽引。座右の銘は“中坊マインド”。

コロナとともに変化してゆく、編集者のありかた、はたらきかた。

最近のお仕事について伺うには「コロナ禍」というキーワードを避けて通れません。光木さんの働き方は、どのように変わりましたか?

大きく変わったのは、朝型の生活になったこと。編集者としては、これは本当に考えられないくらい大きな変化です。もちろんコロナ関係なしに、僕が若かった頃といまとでは時代も働き方も変わりました。1週間自宅に帰れないとか、オフィスを寝床に編集部員たちが雑魚寝なんて、昔はざらでしたから。

たしかに編集者というと「24時間働きっぱなし」というイメージがありますよね。

コロナをきっかけに、もはや深夜まで働く職種ではなくなった。編集者の概念は今後ますます変わっていくと思いますよ。でも“編集”って効率のことでもある。わかりやすくテレビにたとえると「30分番組をいかに40分で撮るか」というような。だから前向きに捉えています。個人的には、お酒を飲む量も減ってきていて、すると体調もいいですし。

 

ソーシャルディスタンスでも、物欲とはノーディスタンス。

たとえば自宅で過ごす時間が増えたことによって、生活空間を充実させようと物欲が高まったりはしましたか?仕事用のデスクやチェアを新調したというような話は、このところよく聞こえてきますが。

家は寝るための場所。昔から、こだわりがないんです。部屋は極力コンパクトにしたいし、モノはあまり持ちたくない。だって、何があるかわからないじゃないですか(笑)。いつ何があってもいいように、家には必要なモノだけ詰め込んでおきたい。仕事だって、いまやiPadWi-Fiさえあれば、ベランダでもできちゃいますし。とはいえ『Begin』的には“物欲ノーディスタンス”なので、物欲はありますよ。ただ、ひとつ変わってきているとすれば「無駄なモノは要らない」ということ。

無駄、というと?

 たとえば僕が以前から愛用している<ロッジ>のダッチオーブン。これさえあれば、どんな料理でも作れるし、しかも、時短にもつながる。つまり、余計なモノを持たなくても、これさえあればいい。“一点上質主義”っていう言葉がわかりやすいかもしれませんが、そんな風におなじ物欲でも、今後はより研ぎ澄まされた物欲になっていくと思っています。

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効能こそ、上質のあかし。たとえば、パンツの丈詰めについて。

ちなみに、自宅では何を着て過ごしていますか?リラックスするために機能的な服を着たり、リモートワークのために襟付きのものを着たり、といった工夫はなさっていますか?

強いて言うなら、外から家に帰ったらすぐに着替えること。花粉とかを持ち込みたくないし、なるべく早くシャワーを浴びますね(笑)。でも、着るものに関してはTシャツにスウェットショーツと、とくに工夫やこだわりはないですね。変わらないベーシックアイテムを着ているだけ。

なるほど。今日のコーディネートについてはいかがですか?着こなしのポイントはありますか?

それも、特にないですね。でもね、さっきの“一点上質主義”の話に戻りますが、そうした考え方って、うちの雑誌でもそうですが、もう昔からずっとあるんですよ。「10年選手」とか「一生モノ」とか、言葉を変えながら。ただ、一点上質というと、以前は値段のことを言っていました。たとえば「10万円超えのモノを一生懸命お金貯めて買う」とかね。でも、いまはより実を求めるところがある。安くても、効能があれば上質なんです。もちろん“効き方”は、ひとそれぞれですが。

たとえばパンツを買うと、丈詰めしなきゃいけないことがありますよね。でも、イヤじゃないですか。下手したら2週間くらい待たなきゃいけないし、試着すると汗をかく(笑)。脱ぐとき、ピンが足に刺さったりしてね……(笑)。要は、自分に丈の合ったパンツは“効く”んです。買ったその日に穿いて帰れますから。今日僕が穿いているパンツも、もともと自分のレングスに合っていたもの。それがつまり“効く”ということ。

先ほどの、無駄をなくすという話にもつながってきそうですね。

そうそう。丈詰めしちゃったらそのぶん布がゴミになるし、上がりを待っていると時間のロスになる。効くモノを選ぶと、自然と無駄もなくなっていく。それが、僕のモノ選びの工夫とこだわりと言えるかもしれない。

 

つねに身軽でいたいから、バックパックが好き。

バッグについても聞かせてください。普段、どんなバッグを持ち歩いていますか?

つねに身軽でいたいので、バッグは極力使いたくないんです。とはいえ持たなきゃ仕事にならないので、両手が空くものを選びます。両手を空けておかないと、コケたら危ないじゃないですか(笑)。最近はどこに行ってもアルコール消毒が必要だから、そういうときにも手持ちのバッグは邪魔になる。だから、選ぶならバックパックですね。

<アウトドアプロダクツ>のバックパックについては、ブラックのカラーを即決されましたね。本日のコーディネートもモノトーンですが、お好きなスタイルなのでしょうか?

黒には、着やせ効果があるらしいので……っていうのは冗談で、どんなモノでも、黒を選べば都会顔になる。ダウンジャケットでも、バックパックでも。

ブランドについてはもはや説明不要といったところだと思いますが<アウトドアプロダクツ>にはどのようなイメージをお持ちですか?

アメリカの老舗。それに“アウトドアプロダクツ”ですよ?もうそれだけで敵ナシですよね(笑)。僕が最初に手に取ったのは、フランスの鞄メーカー<エルベシャプリエ>のバックパック。じつは一時期<アウトドアプロダクツ>が生産を請け負っていたんですよね。それからずっと使っています。どんなトレンドが来ようとも、変わらず、良い。単純に良すぎて、うんちくすら要らない。

光木さんにとって、それくらい当たり前の存在であると。

<コンバース>のスニーカーみたいなものですよね。<コンバース>って、おじいちゃんから子どもまで、男女問わずみんな履くじゃないですか。父親と10代の娘が同じブランドのものを使うなんて、なかなかないことですよ。でも<アウトドアプロダクツ>は、そういう稀有な存在だと思っています。

つまり、どんなひとにも効く。

そういうこと。

ダッチオーブン、ミニマルな部屋、ジャストレングスのパンツ、そして<アウトドアプロダクツ>のバックパック。すべてモノは違えど、光木さんのモノ選びにおけるブレない軸が見えてきたような気がします。“研ぎ澄まされた物欲”というお話も、腑に落ちます。

僕にとっては、家もバックパックみたいなものなんです。必要なものだけ詰め込んで、思い立ったらパッとどこへでも行ける。それが大切です。

(左)8月16日発売『Begin』10月号の表紙にもなっている<モンブラン>のボールペンは、一点上質主義の象徴のような存在だという。「僕、ボールペンって買ったことがないんです。これも前の会社を辞めたときの送別品。このボールペンが一本あれば、ほかのモノは要らない。これで事足りるんですよね」 (右)<キャプテンサンシャイン>は、光木さんの友人である児島晋輔さんがデザイナーを務めるブランド。なかでも愛用するのは、過去にワンシーズンだけ作られた極厚リムのサングラス。「マスクをしていて曇ってしまう心配のない跳ね上げ式ってところが、ミソです」

 

Begin』、新たなフェーズへ。モノとして、所有欲を掻き立てたい。

最後に、今後の展望について聞かせてください。

今年『Begin』は33年目です。じつはリサイズしたり、表紙の紙を変えてみたりなど、デザインを見直したばかり。雑誌って、捨てるものじゃないですか。でも、うちは保存性のあるコンテンツの多い雑誌なので、できればずっと持っていてほしい。だからこそ、触っていたくなるような、モノとして魅力的なデザインを目指しました。今後は<アウトドアプロダクツ>のバックパックのように、だれからも愛される存在になっていきたい。

少し前を行く<アウトドアプロダクツ>は、いわば先輩のような存在といったところでしょうか。

そうそう。916日発売の『Begin11月号では<アウトドアプロダクツ>の特集企画を掲載する予定です。今日語り切れなかったブランドの魅力についてもたっぷり紹介するので、お楽しみに!

  • 452UOUTDOOR PRODUCTS ¥4,800
    <アウトドアプロダクツ>の定番デイパック。通常のナイロンよりもはるかに強靭な米国インビスタ社の素材「コーデュラ®ナイロン」を使用。2枚の生地パーツで構成されたシンプルな作りながらも、軽量かつ耐摩耗性、耐久性、耐水性に優れています。ジッパーにはYKKを採用。
  • Photo:Shinji Serizawa
    Text:Masahiro Kosaka
    Direction:RIDE MEDIA&DESIGN

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